自分が無くなってしまった友人へ


 自分を大事にしないと、自分は消えていく

 それは自分だけが神に与えられたものだからだ


 お前の人生は無い

 なぜならば、お前の人生はお前が決めて生きているものではないから

 お前の親はいない

 お前の親はみんなの親だから

 子供であるお前以外のみんなも、お前の親がどんな親か知っているから

 親の顔は子供しか知らないものなのに、お前がみんなに親を知ってもらいたがるから、子供以外の、例えば俺だってお前の親がどんな親か知っている

 だからお前の親はお前だけの親ではなく、みんなの親だ

 お前の恋人も、お前の恋人ではなかった

 お前の恋人がどんな人か、恋人でなくても知っているから

 そしてその恋人はお前が選んだわけではなく、みんなが選んだから

 お前がみんなの好きそうな人を選んだから

 付き合うべきかわかれるべきか、全てみんなで考えたからお前の恋人ではない

 みんなで付き合ったみんなの恋人だ

 お前に恋人はいない

 お前だけの恋人など一人もいなかった

 そしてお前には友人もいない

 夫もお前の夫ではない

 代表でお前がそこにいただけで、どうするか決めたのもお前ではない

 お前はただ、みんなの意志に従って行動していただけだから

 何もかも、お前は自分で決めていないから、お前のものではない


 お前はいつも「私も同じ」と俺を見て言う

 俺の話を聞いて「私もそう思う」「私も同じことがあった」と言う

 ならばお前は俺のはずだが、俺はお前を見ていて「俺も同じだ!」と思わない

 お前の考えを聞いて「俺もそう思う!」と思わない

 なのにお前は俺の話を聞いていつも「私も!」と言う

 お前は俺と同じはずなのに、お前と俺はまるで違う

 俺がやらないことばかりやるし、同じ考えとは思えないことしかしない

 お前は俺と同じだと言うが、俺はお前と同じだと思わない


 お前は俺ではないのに、お前は俺が自分だと言う


 お前は誰だ


 お前の選ぶ何もかもが、お前が選んだわけではない

 過去もこれからも、全部誰かが選んでいる


 お前はいつも言う

 「どうすればいいの?」

 お前は自分の意見を他人に決めてもらうから、お前もお前ではない


 お前には自分がない

 そのお前自身が、お前ではない

 お前の体はお前の意志で動いていない

 使っているのがお前ではないのだから、それはお前ではない


 そして俺はお前ではない

 だからお前はどこにもいない

 お前のものはどこにもない


 その自分もお前ではないし、お前が生きてきた人生も、親も、友人も恋人も伴侶も

 そして子供も

 全部お前のものではない


 誰かの人生であり、みんなの友人や恋人であり、みんなの子供だ


 だからお前のものは、この世にない


 お前が考えて決めたことはなにひとつない

 お前が考えて決めて動かしたものは、なにひとつない


 全て誰かが決めて動かした、お前以外の誰かのものだ


 お前はこれからも、誰かの人生を生きる


 俺はお前ではない

 俺は俺だ

 だから俺の親は俺の親

 俺だけが知っている俺の親

 俺だけが知っている俺

 そして俺だけが知っている俺の人生だ

 俺が考えて決めてきた

 俺が決めて実行してきた


 誰にも分け与えない

 自分の分は自分で決めた

 だから俺のものだ


 これからもこの人生は俺のものだ

 生きるのも俺だ

 お前の人生は誰かのもので

 これからも決めるのは誰かだ


 お前は何も考えないし、決めない

 だからこれからもお前のものはなにもない


 お前はお前によって動かされるのではなく、誰かによって動かされる


 そしてお前は誰かを見ては「この人は自分だ」と思う

 私も、私も、と誰かと同じ人だと思う

 だが、俺はお前ではない


 俺はお前に「俺も、俺も」と同意しない

 なぜならば、俺はお前を見ていても、ちっとも同じだと思えないから


 お前は何も決めない

 結論を出さない

 いつも他人に関与してもらい、他人に決めてもらって安心する


 他人に決めてもらうことこそお前の安心であり

 自分で決めることなどできない

 そしてお前のものはなにひとつ残らなかった


 子供はお前に言う「私も、私も」

 だが、お前は「違う」と言う


 子供も本当は同じだと思っていないが、違うと言うとお前が怒るから「私も、私も」と言う

 だがお前は「違う」と言う


 お前はいつだって自分を見てほしい

 みんなで自分を見てほしい

 誰かと一緒に自分のことを決めたい

 みんなで一緒に決めたら、安心だから


 お前が自由に使えるものは何もない

 自分の人生もお前のものではない

 お前が捨てたから

 お前自身もお前が捨てたから


 人の反応でころころ変わる

 お前はその時その時違う人間になる

 お前はもうどこにもいない


 自分自身とは、自分の決断によって生きることで生み出されていくものだ

 自然な形を自分自身が知っていくものだ

 だがお前は自分で決めてこなかったから、お前自身もお前を知らない

 私も、私も

 だが、お前は誰にもなれていない

 私も、私も

 というのに、俺でもない


 そしてお前は、自分がどうなのか自分も知らない


 お前は自分で考えなかった

 自分で選ばなかった

 決断しなかった


 ただ待っているだけ

 他人のふりをしていたら、いつか自分がどこかからやってくるのではないかと思って


 あの人は自分かもしれない

 この人が自分かもしれない


 私も、私も


 だが、どこにも私はいない


 お前は、誰だ


 俺もお前がどんな人間なのか、知らない


 自分を自分で動かしたら何が起きるのか怖いから

 お前は自分を他人に動かしてもらう

 他人に決められた通りに生きる

 そして他人の意志で動いていると不自由だから、誰かに救ってもらいたがる

 自分の思い通りに生きられないから、誰か救って、と


 だが、救い主を見つけてはお前は救い主の言うとおりに動く

 そしてまだ不自由だから、この人といれば楽になれると思ったのに、と相手を恨む


 言うなり人間

 意志のない人形


 返事もしない

 パターン化した会話

 噛み合わない返事

 決められたことしか吐き出せない、壊れたロボット


 A.I.でももう少しマシな返事をする

 マシな会話をする


 「返事できることだけ」話しかけてもらいたい、人間の会話ができない人間


 取扱説明書にないことは、お前はできない

 教えられたことしかできない、言えない


 なぜならば、自分で考えて決めることも、話すことも、お前にはできないから


 ただ過去に記憶したものを吐き出し続け、今を生きていくのだ


 お前は子供であることに満足していないから、今も子供のままでいる

 満足するまで「自分のためにある世界」だと思い続けて生きている

 立場を勘違いし、おかしな返事をし、噛み合わない会話を繰り返し生きている


 親になって子供が大きくなっても、自分さえ子供のままでいれば、いつか理想の親が現れると思って生きている

 我慢して従っていれば、きっとご褒美に誰かが救ってくれると信じて

 そして

 我慢して言われたとおりに生きる人生を選んだ


 どんなに待っても救いはないのに

 待っているつもりで考えずに生きていた、それがお前の人生だ

 どんな気分で生きようと、それがお前の人生だ


 それがお前の選んだ道

 従いながら待つ

 という人生を選んだ


 お前は自分がどんな人間か説明しながら、他人の言ったことを実行し続けて生きる


 お前にとっての人生とは、実行し体験している人生ではなく

 お前自身の口から出てくる説明の世界のことだ


 説明している世界に現れるのは、説明だけの救い主でしかない


 俺はお前とは違う

 黙って実行して、体験して、実感しながら人生を生きる

 俺は俺の決めた俺自身の人生を生きる


 そしてお前が「私も」と言って俺を真似しても、誰を真似しても、お前の人生は他人と同じにはならない

 誰もお前の人生を真似して生きていないのだから


 お前の人生を真似して生きていくのは、お前の子供だけだ


 既にその人生は、そっくり同じ形で始まっている


 お前が今、親と同じ人生を繰り返しているように



お前の友人 最上 雄基